夕暮れ時になると、少し風がひんやりしてきて、新緑の間を吹きぬける風は、いっそう澄んでいるように感じられる。住宅街を散歩していると、家々の塀沿いに五月や山吹、クレマチスなどいろいろな花が見える。山吹の眩しいくらいの黄色を見かけると子供の頃、庭に咲いていたのを想い出し、ふと、風まで懐かしく思えてくる。
制作中の人形は、表情をもっとストレートに作りたいと思って磨いてみた。顔や体もやっとすべすべになってきた。子供のほっぺたや、まぶたの柔らかさが少しずつ出てきたような気がする。木の質感がしっとりしてきて肌に近くなってきた。でも磨く事に集中しすぎてかたちを潰してしまわないように、かたちを作る気持ちで磨いていかなくては。描いて作る表情と、かたちと、質感のバランスを確認しながらすすめている。