<   2008年 08月 ( 5 )   > この月の画像一覧

記憶の中の風景

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子供の頃、二学期が始まるこの時期に毎日通っていた橋の上から川原を見ると、夏草の背がずいぶん高くなって生い茂っていたのを覚えている。その中にたくさんの月見草が咲いていた。少し日の暮れるのも早くなって、夕方近くなると黄色い色はいっそう浮かび上がって見えた。

今では、のどかに続いていた土手もコンクリートで整備され、月見草が咲いていたあたりは綺麗に芝生が植えられている。植木で市のマークが遠くから見てもわかるように整えて作られている。

安全の為に、変わっていくのは仕方ない。でも、この作られた景色を見て、何年か後に懐かしく想い出す人はいるのだろうかと、ふと思った。記憶に残る風景となるのだろうかと。

人の手を加え、作為的に作った形に、なんとなく虚しさを感じる。とはいえ、私も木を彫り、自然のものに手を加え人形を作っている。時々、偶然、無意識にできた形に面白いと思うことがある。けれど、もっと良くしたい、もっと良くしたいという思いから、それはそのまま留まっていくことができない。思い切ってこれで完成だ、とするにはためらってしまう。頭で考えて作った形は、なぜか浅いものになってしまうことが多い。でも、無意識に作った形のままいるわけにもいかない。その矛盾にぶつかりながら、自分の心を写し出す形を探している。

やっと関節のボールが出来てきた。これからボールを受けるお皿を作るところ。

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by hirokodoll | 2008-08-29 17:14 | 制作の想い | Comments(0)

蝉の声

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夕方、ふと空を見るとプレゼントにかけたリボンのような雲が白くのびていた。夏の終わりを感じさせるかたちだ。

毎年、暑くなり始める頃、なぜか意気込んだ気分になってくる。蝉の声にあおられて心が昂揚してきてしまうのか、流れる汗を拭き拭き人形を作る。暑さも中盤にくると、いくらはりきっていてもペースはガクッと落ちる。まあ、いつもこんなもんだったかと、納得する。

時々、息をこらして目を見張って、形を追いかけてみたりする。形の糸口が見つかると、からまっていた糸がほどけるように、今まで気ずかなかったものが見えてくる。ほんの少しほどけて、またからまる。それも、いつもこんなもんだったかと、納得する。

いくらか涼しくなってきた風が、通りぬけた。

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by hirokodoll | 2008-08-22 22:02 | 制作の想い | Comments(0)

電動彫刻刀の修理

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胴体に首の関節のお皿を彫り始めようとしたら、電動彫刻刀がピタッと動かなくなってしまった。木口という固い面なので手で彫るのは大変な労力だ。無理して彫ると自分の手まで壊れてしまう。

買ったお店へ持っていっても、この時期お盆休みが入って時間がかかりそうだ。しかも修理が可能なのかどうかもわからない。思い切って販売元の会社(東京オートマック)へ直接持ち込みをお願いした。

会社で彫刻刀を分解してみてもらうと、中のモーターが完全に消耗していた。もう8年くらい使っているのだから仕方ない。有り難い事に、すぐに修理にとりかかって下さった。待たせていただいている間、他の機種を試させていただいたり、アメリカの木彫雑誌を見せていただいたりした。雑誌に広告を出しているので、来週はネイティブ・アメリカンの人達にむけて商品のデモンストレーションに行くらしい。

しばらくすると、さっき電動彫刻刀を持っていった方が戻っていらした。モーターを取り替えた電動彫刻刀は嬉しいことに直っていた。長く使っているから、もしかしたらもうだめなのかと思いつつ愛着があったので、ほっとした。

おかげで無事に、首のお皿を彫ることができた。

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<8年間使用したモーター>

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<『東京オートマック』のある、東京・旗の台、駅東口>


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by hirokodoll | 2008-08-15 18:00 | 制作の道具 | Comments(0)

夏休みの気分で

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朝から蝉が勢い良く鳴いている。一瞬、通りぬけていった風に子供の頃の夏休みを想い出した。

一人っ子であまり体も丈夫でなかったので、家の中で絵を描いたり人形で遊んだり、空想にふけったりして過ごすことが多かった。一人でいても退屈した記憶はなく、学校へ行っている時よりも好きなことが思うぞんぶんできて、誰からも邪魔されることもなく、時間に区切られていない生活をけっこう楽しんでいた。

朝早く庭に咲いた桔梗の清々しい青い色、小さな小さな紙風船の形をした蕾を指でちょっとつぶした時のプスッと破裂する音、微かに残っている指先の感触。

35㎝の人形に平行して23㎝の人形も作り始めた。無心に遊ぶ子供の気分で作りたい。


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by hirokodoll | 2008-08-08 17:47 | 制作の想い | Comments(0)

夏の光

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ここのところずっと続いていたギラギラとした夏の日差しも、昨日と今日はちょっとひと休みというかんじだ。カーテンをゆらして入ってくる風が心地いい。

少々バテ気味なので、横になって休んでいると、先日行った東京都庭園美術館のエントランスにあったラリックのガラスのレリーフを想いだした。エレガントな女性像が浮き出している琥珀色の鈍い光が妙に心から離れない。もともとあんな光り方だったのか、時代がついてきてああなったのか、ガラスも呼吸し変化するものなんだろうか。時間を吸い込んだ光に思えてならなかった。

強く光り輝くものには、今、目の前の「時」を感じる。それに対して、鈍く光るものには、心の奥がなぜか反応して、遠い過去にひっぱられてでもいるかのような気持ちになる。

写真の人形は、作ってから数年たっている。柿渋を塗ったので、いつもと同じ桂の木を使っていても色が濃い。時間がたったので、さらにしぜんとやけてきた。

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by hirokodoll | 2008-08-01 15:26 | 制作の想い | Comments(3)