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おしまいは、始まり

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秋を通り越してすっかり冬になって、やっと人形が完成した。でも、どおも終わった気分になれない。

頭の中の子供を、つかまえようと追いかけて、とどきそうになると、スルリと手をすりぬけて逃げていってしまう。ずっと追いかけっこの繰り返しのようだ。やっぱり、そう簡単にはつかまえさせてはくれない相手だ。

作った人形を見ていると、もっとそこのところは、ああしたかったのになあ、と残念な思いが膨らんでくる。あの時点での冷静さに欠けていたかなあ。あそこはもっと、あんな感じにしたかったんだけど、もっと慎重さと大胆さが必要だ、などと思えてくる。

よし、次の人形を作ろう。道具の手入れをしながら、気持ちを次に切り変える。この人形も、時間がたつうちにいつのまにか色が落ち着いてきて自然とよくなってくれたらいいなあ、と淡い期待をしながら。


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by hirokodoll | 2007-11-30 17:15 | 人形の制作 | Comments(0)

毛糸

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東京にも木枯らし1号が吹き抜けて、いっきに冬になった。もうすぐ出来上がる人形のセーターの毛糸を買いに行ってきた。少し気が早いようだが、時期が遅くなってしまうと毛糸の種類がなくなってきてしまう。とくに、いつも行く青山の『三ツ葉屋』という毛糸屋さんは、ほとんどが輸入もので同じ毛糸は数置いていない。なくなっても他のお店で探すわけにもいかないから、行っておいたほうがいい。

イギリスの毛糸、フランスの毛糸、イタリアの毛糸、国によってそれぞれ色調も風合いも違う。渋い色の混じったペルーのアルパカ、ドイツのアンゴラ、それはそれは魅力的だ。色に奥行きがある。日本のものも、気に入ったのは使うが、やっぱり私の中の定番はイギリスの毛糸だ。深い落ち着いた色に心が惹かれる。でもみんな個性があって素敵なので、そんな毛糸に囲まれていると、ドキドキしてしまう。

毛糸を編む時には、服を縫う時とは違う気持ちが加わるような気がする。毛糸は「着せる」というより「包みこむ」というイメージがある。愛おしいものを、そっと包みこみたくなる気持ちが加わるのだと思う。

家に帰って、さっき選んだ毛糸を並べて、触った時のしっとりとした柔らかさ、色の響きあいを楽しみながら、まだ作っていない人形の姿を、頭の中に浮かべてみた。


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by hirokodoll | 2007-11-23 17:01 | 人形の服 | Comments(2)

音色

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何気なく聞いていたBGMのピアノの音に、はっとさせられることがある。ただ鍵盤を譜面どおりに叩いているだけではない、演奏者の音色がある。

一音一音が、すべて意志を持ち、生まれてきた旋律は一つの曲を作り出している。この一つの音が選ばれるまで、どれほどの試行錯誤があったのだろう。想像を越えた測りしれない時間の重さを感じる。

熟練したしなやかなタッチ、弾力のある柔らかさ。すべてが調和され、うっとりとするような流れの下に演奏者の厳しさは完璧に隠されている。そして、いつのまにかその流れに引き込まれていく。

鍵盤の一つのタッチは、木をひと彫りひと彫りしていくのに似ているように思える。ほんのひと彫りが全体につながっていく。ただ目や鼻をあるべきところに正しく作るだけではなく、自分の心の中のかたちを作らなくては、もっと選んだかたちにしなくては、私の音色を奏でたい、と思いつつ、まだ指が鍵盤の上でつっかえてもたついているみたいだ。

聞いていたのは、アリシア・デ・ラローチャのCD

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グラナドス/スペイン舞曲集


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by hirokodoll | 2007-11-16 16:56 | 制作の想い | Comments(0)

行きつ戻りつ

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作りかけの人形が、もう少しで仕上がりそうな気がして、でも近づいたと思ったらすぐに逃げていく。夢の中で走っているように進まない。手の疲れもたまってくる。

そんな時、気分転換にいつもより少し遠くまで散歩に出かける。気にいっているのは、家から30分近く離れている世田谷線の線路沿いの細い道。

線路の脇には、いろんな花が咲いている。夏から秋にかけては、濃いピンクのおしろい花がたくさん咲いていた。子供のころ祖母の家の前の細い路地にも咲いていた。プーンと甘いおしろいのような香りがする。よく鼻を近づけて嗅いでみたものだ。

朝顔に似た小さな花が、少し寒そうに咲いているのを眺めながら歩いていると、すぐそばを、ゴトゴトとゆっくり世田谷線が走っていった。

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by hirokodoll | 2007-11-09 16:29 | 制作の想い | Comments(0)

刃物屋さん

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何本か欲しい彫刻刀があったので、以前知り合いの木彫りの職人さんから教えてもらった上野にある『宗意』という刃物屋さんに行った。お店のある広い浅草通りには、田原町の方へ向かって仏壇屋さんが沢山ある。場所がら、本職のお客さんがくるところなのだろう。ちよっと立ち止まり、ずらっと並んだ刃物の数と店がまえのムードに緊張しながら入っていった。

こんなのが欲しいと言うと、奥さんがガラスケースの中から出してくれた。持って行った木彫りの人形も見せて、こんなところに使いたいと言うと、笑顔で相談にのってくれた。お客さんはポツリポツリだが途切れずに入ってくる。バイクで来たガテン系の若者や、関西から来た男性が熱心に食い入るように眺めたり、手に取らせてもらったりしている。そして、いくつもの中からしぼりこんでいる。あれもこれも欲しくなるのを、今回はこれにしようと、じっくりと決めているのがよくわかる。私もどれにするかひとまず決めてから、お店の写真を撮らせてほしいとお願いした。

古い木の引き出しや、のれんがとても良い感じだ。奥さんは、接客しながらまるで自分の身支度を整えるように、のれんの下にあったダンボール箱を、さっとどかしてくれた。のれんの文字は気に入るまで何度も書かせ、染めも特別に注文したものだということだった。

帰ってから、さっそく切れ味を確かめた。なめらかに滑るような刃先だ。手の中で柄のなじみ方もさすがに今までのものとは違っていた。かなり繊細な角度の刃先なので、上手く研げるか少し不安もあるが、こうやってだんだん研ぎも上手くなっていくんだ、あせらないで一つずつクリアしていこう、と自分に言い聞かせた。

下の写真は「宗意」さんの少し先にある高村光雲も使っていた刃物屋さんの『光雲』

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by hirokodoll | 2007-11-02 17:21 | 制作の道具 | Comments(2)