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木彫りの人形「色や質感の好み」

小学校一年生のちょうど今頃、図工の時間に、何か物語の中に出てきたライオンの絵を描かされた。私は草原にいるライオンではなくて暗い森の中に身をひそませているような、恐ろしくて強そうなライオンを描きたいと思った。

身近にいた祖父が熱心な日曜画家で、日本画を描いていた。でも祖父の描く絵は色があざやかすぎて、いつもなんだかもの足りなく感じていた。それよりもたしか、かかりつけの病院で見た少し暗い色みの重々しくガサッとした質感の油絵にあこがれていた。

頭の中に浮かんだライオンを自分なりにこう描きたいとドキドキしながら描き始めた。たてがみは、絵の具のチューブからじかに色をのせて、デコボコしたかんじにしようと思った。するとすぐに先生から「絵の具はパレットで、といて使いましょう。」と注意された。私の頭の中は混乱した。だって私はマチエールが作りたいんだもの。でもそんな言葉はまだ知らないから何て言ったらいいかわからない。それに親からは、「先生の言う事はよく聞くのよ」と教えこまれていた。まだ入学してまもなく名指しで注意された恥ずかしさと、なぜそうしたかを説明できないもどかしさと、好きに描けない悔しさが、ずっと消えなかった。

40年たった今やっぱりツルッとかサラッとした質感よりもザラッとかガサッまたはボソッとした質感のものに惹かれる。絵に限らず布、焼き物、木、いろいろなものでそう思う。色も落ち着いた色調に惹かれる。好みっていつの間にどうして決まるんだろう。しかもなぜか変わっていない。変わらないものなんだろうか。自分の作品の中でちょうどいいここちよく感じる質感、ここちよい色をずっと探し続けている。


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来月、5月7日(月)〜5月13日(日) 東京・銀座「柴田悦子画廊」にて個展をいたします。お近くにお越しのさいはどうぞお立ち寄りください。


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by hirokodoll | 2007-04-27 17:49 | 人形の制作 | Comments(4)

木彫りの人形ー木の色の変わりかた

個展もだいぶ近ずいてきたので、人形のチェックをした。ひびが入ったりしていないか、下着をつけ忘れていないか。

作ってから何年もたった人形もいるので、それぞれだいぶ木の色がやけて濃くなってきた。初めからの色も微妙に違っているが、人間に色白タイプの人や、日焼けしやすい人がいるように、木も濃くなる速度が違っているように思える。

それと、最後まで磨かずに彫刻刀で仕上げたものに比べ、サンドペーパーをかけてツルツルとした肌のかんじに仕上げたものは、わりと色白のままで変わりにくいようだ。

木彫りを作り始めて最初の頃は、柿渋という染料を、塗ってみたのが何体かある。とくに色の黒い人形は柿渋を塗ったものだ。柿渋は果物の柿を発酵させたもので防虫、防カビなどの効果がある。家を建てる時に土台になる木に塗ったり、のれんなど布や、紙に文字を書く時、後でぬれてもにじまないように塗っておいたり、昔から生活の中では身近に使われていた。

私も人形の防虫にと、塗ってみた。赤茶けた落ち着いたいいムードになるが、最近はそのままの色がどうなっていくのかを見ていたくなって使っていない。制作中の人形に気を取られて、久しぶりに少し前に作った人形をふと見ると夏休みが明けた時の子供のように、やけて少したくましくなっているように見える。ひとりで成長しているみたいで、なんだか嬉しくなる。

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by hirokodoll | 2007-04-20 18:23 | 人形の制作 | Comments(4)

木彫りの人形事始め3

桂の木の断面を上から見ると、木目がゆるやかに、弧をえがいている。弧の内側に中心があるのを想像すると木の断面の全体が頭に浮かんでくる。人形の顔や胴体の正面をどの面でとったらいいだろう。中心から遠い方の二つの面は木目の間隔が広いので、そのどちらかでとっていくことにした。そのどちらにするかは、感覚的に木目の形や色で決めた。

何体か作っていると、いつも顔のおでこや、頬、おなかのおへそのあたりや、お尻の出っ張った部分に、ぐるぐるの木目模様が出てくることに気がついた。しばらく不思議に思っていたが、知り合いの木彫師に聞いたところ、断面には、まさ目と板目という名前がついていてどうとるかで、そうなるんだと教えてくれた。作る人によっては、その模様を嫌ってあまり出ないようにとるとか。

私はぐるぐる模様は、なんだか愛嬌があって好きだ。どこに出てくるか、経験が浅いからかはっきりとはわからない。だからよけいにワクワクする。いたずら坊主が、おでこをすりむいたり、ちょっと汚れていたりするみたいにも見えておもしろい。

仏像の写真を見ても、あっ、こんなところにこんな模様がある。と、見つけると、妙に親しみを感じたりする。人それぞれいろんな個性を持ちひとりとして同じ人がいないように木にもそれぞれ個性がある。私はもともと、あまりにもきちんと綺麗なものよりも、どこかぬけているものに心が惹かれるたちだ。だからなおさら、そんな楽しい個性を大切に作っていきたい。

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by hirokodoll | 2007-04-13 17:35 | 人形の制作 | Comments(0)

木彫りの人形事始め2

もり上げて形にしていく方法ではなくて、削って形にしていくのは、どんなかんじか、実験に柔らかいバルサ材で人形を作ってみた。関節のボールもお皿も作れたが、完成作品にするには柔らかすぎて、ぶつかるとすぐにへこんで傷ができてしまう。本格的に作るには、どんな木がいいか、何件か銘木屋さんを歩いた。

朴(ほお)という木が彫刻をするには、むいているらしい。木目も繊細でじゃまにならなさそうだ。大きな木目がはっきりしすぎていると私の作る人形のサイズではうるさくなってしまう。色は少し青みがかっている。桐はどうだろう。いろいろ見ているうちに桂の木に目がとまった。優しい静かな木目で、少し赤みがかった色だ。桂は平安時代から仏像や楽器などにも使われている。子供の人形を作るのだから、少し赤みがあった方が元気そうでいい。この色みなら彫ったあとそのままの色を生かすことができる。桂で、作ってみることにした。

しばらくたってから、家の近くの公園にも桂の木がけっこう群生しているのに気がついた。冬には葉を落とし、夏になると10㌢くらいのハート型に似た形の葉をたくさん繁らせる。秋にはオレンジがかった黄色に紅葉し、とてもきれいだ。今はまだ、みずみずしい小さな葉をつけている。

3種類の木の写真、右側は桂、真ん中奥は朴(ほお)、左側の丸太と断面が見えるのは桐。

屋外の写真の木は桂。


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by hirokodoll | 2007-04-06 16:37 | 人形の制作 | Comments(2)